自分の基準を言葉にする

 

孫と暮らしていると叱らないといけない場面が多くあります。

3歳の男の子だから色々とやらかしてくれます。

そんな時思わず「そんなことしたらお店の人に怒られるよ」と、

誰かに叱られるという言い方をしてしまうと、いかんな〜と反省します。

 

昔、遠藤周作のエッセイでこんな話がありました。

バスの中で言うことを聞かない子供にお母さんが

「そんなことしてたら運転手さんに怒られるよ」と言うと、

「運転手は怒りませんよ、怒るのはお母さんですよ」とマイクでアナウンス。

ちょっと荒療治だが、この運転手さんは偉いと感じたという話。

 

別に孫に嫌われたくないと思っている訳では無いのですが、

つい叱る主体を他者にあずけてしまうのは良くないと思います。

叱るのはじいじ。叱ることを通して躾をするためにも、

叱る/褒める基準をはっきりさせないといけないと思い、

小さな子供に伝わるように言葉にすることを始めています。

これは自分の価値基準を言語化することと同じことです。

自分にとって大事だと思ってやっています。

 

企業においてはどうでしょうか?

「俺は君のことを評価しているんだけど、部長がさあ〜」

とやっているマネジャーはメンバーから信頼されないものです。

メンバーはやはり一番近くで見ている

マネジャーの評価を一番気にしているものです。

 

どの企業も評価制度はしっかりしていて、

業績評価は数字やKPIで客観的に出るようになっています。

マネジャーが人事の仕組みをきちんと運用することは大事ですが、

それだけで終わっていてはいけません。

育成責任を負っているマネジャーが

現場・職場で、仕事を通して、人を育てるために、

どういう仕事や行動を褒め/叱るのかという基準を

しっかり持つべきだと思います。

 

しかし、その基準をはっきり持っているマネジャーは稀です。

なので、私のマネジャー研修では、自分のマネジメント基準を

言葉にすることをやってもらっています。

自分の仕事観、職場観、人材育成観を言葉にすることから始めます。

これまでの良い上司や良い職場で得たもの(その逆も)、

自分の体験・経験を振り返りながら自分の考えを言葉にする作業は、

最初は借りてきたような言葉からスタートしますが、

磨いているうちにその人らしい言葉になっていきます。

 

変化の激しい、働く人の価値観も多様化している今だからこそ

まずマネジャーが自分の基準を明確にして発信すべきです。

会社が経営理念や行動基準を示しているように。

 

現在の中間管理職、マネジャーは忙しい。

リモートワークもあり、メンバーとの接点がどんどん少なくなっている。

そんな中で、自分の考えが伝わらない、メンバーの育成がうまく行かない

といった悩みを持つマネジャーは多くいます。

 

そういう悩みがある方こそ、自分のマネジメント基準を

言葉にしてメンバーと共有することから始めるのをお勧めします。

 

今回掲載した写真は、私が30歳頃にメンバーに渡したレターです。

当時のメンバーが大切に持っていてくれました。

青臭くて恥ずかしいのですが、

自分の考える仕事観、職場観を言葉にしたものです。

優秀で自立していたメンバー達だったので楽でしたが、

これがあったおかげで、皆が同じ方向を向いて仕事できたと思います。

「相手の立場に立つ」とは「自分の立場を一旦捨てる」こと

 

少し大げさな表現をしますが、

相手の立場に立つには、自分の立場や役割を一旦捨てて

考えないといけないと思っています。

 

以前もこのブログで

相手の立場に立つつもりでも、端から客観的に察したり、

こちらの勝手な価値判断で決めつけてしまうもの。

相手の立場に立つとは

・相手の置かれた現実状況をできる限り掴んで

・自分だったらどう感じ考えるかをイマジネーションして

ということだということを書きました。

 

これが利害関係のある相手の場合、

営業場面〜売り手と買い手の関係や、交渉場面ではなかなか難しい。

 

「顧客の立場に立っている」と言いながら、

実際は売り手(営業)の立場から離れられずに、

その立場で出来る範囲を前提に置きながら考えるものです。

 

それはそうです

無理難題ばかりが出てきそうだ

応えられないような要望を想像したって意味がない

そもそも顧客はそこまで要望期待していない

・・・・・・・・・・・・

 

しかし、そこを超えることが相手との信頼を創造します

 

ある社長が話してくれたエピソードです。

 

中国での合弁先を自分で開拓すべく何社にもアプローチして、

ようやくパートナー候補と出会い交渉をスタートさせました。

しかし、なかなか話が進みません。

「ここまで良い条件を提示しているのに何故話が進まないんだ・・・・・」

滞在先のホテルで途方に暮れかかったとき

「相手から見れば、関西の名もない小さな会社。当然だな」と思い、

翌日、自社製品の設計図を見せて「試しに一緒に作って見ませんか?」と提案。

相手の技術陣は驚き「そんなことして良いのか?」と逆に心配されたそうです。

そこから話が急展開し良きパートナーを得られたのです。

 

「社員に『相手の立場に立って考えろ!』と言ってきたけど、

俺ができていなかったわ」と話してくれました。

 

また、元セブンイレブンの鈴木さんのエピソードを思い出します。

 

鈴木さんは「お客様のために」でなく「お客様の立場で考えろ」

とよく言っていたそうです。

そう言っていても、なかなか自分の立場を捨てきれない。

そこを社長として決断してきたんだと感じるエピソードです。

 

赤飯の開発エピソード

鈴木さんが、試食で一口食べて赤飯本来の味でないことに気づき、

製法を聞くと、ご飯と同じ炊飯の生産ラインで「炊いている」とのこと。

開発スタッフは工場に蒸す設備がなかったため、今ある設備を使って

いかに美味しい赤飯をつくるかを一生懸命考えていた訳です。

売り手の都合を優先した「売り手の立場で」の発想だったのです。

鈴木さんは蒸す設備投資を即決して開発を進めました。

結果、和菓子屋など専門店に引けをとらない大ヒット商品になったそうです。

 

相手の立場に立つには、自分の立場を一旦捨てないといけない。

自分の立場や役割を捨てて考える勇気がいるのです。

 

経営者には「相手の立場に立って」考えられる人が多いと感じます。

このようにゼロベースで決断する思考が身に付いているからでしょう。

人は変わらない

「うちの幹部は変わらない」

「研修に出して少し変わったと思ったが元に戻った」

研修の打ち合わせなどでよく出てくる言葉です。

 

本人が居ないところでの会話で留めず、

直接言ってしまう社長もいます。

そういう方ほど、教育熱心なのですが・・・。

 

これを期待の裏返しと考えてくれれば良いのですが、

多くは「自分は変われない。駄目なんだ」と

自分を認識してしまうから問題です。

 

私は『変わる』という言葉を使いません。

人は簡単には変わらないし、無理に変わる必要はない

と思っているからです。

 

『人は変わらないが成長はできる』と考えています。

上記のように“自分は変われない”と思い込む人は

自分を成長させるための努力をしなくなります。

 

では、成長する人とはどういう人か

 

その重要な要素は

『自分を前に進めるような、物事の見方・感じ方ができる』

ということです。

 

先日、ある会社の若手研修でこんなエピソードがありました。

その会社は外食産業で、アルバイトスタッフばかりの店舗に

社員が一人だけ配属され、2年目から店舗管理を任されます。

 

2年目社員Aさん

店舗に配属され、苦手なスタッフがいた。厳しいことをズケズケ言う。

年下だが店舗経験は自分より長い。言っていることはどうも正しい。

毎日ストレートパンチを打たれている感じで、元気を無くしつつあった。

ある日、言い方は別にして、正しいことを言われている。

そのスタッフの言う通りにやるとうまく行くと捉えることにした。

逆に厳しいことを言ってくれることがありがたいと思えるようになった。

仲良くなっている訳ではないが、良い関係になれていると思うということでした。

そのスタッフの意図は分かりません。

新しい社員をちょっといじめてやろうと思ったのかも知れません。

Aさんにも色々な捉え方があったと思いますが、

そのように捉えて前に進んでいった訳です。

 

これからも色んな体験をする中で、

自分を前に進めるための捉え方を積み上げていって欲しいと

思いました。

 

これが、幹部クラスになればどうでしょう?

柔軟に物事の捉え方を変えることは簡単ではありません。

しかし、やはり幹部・リーダーとして成長し続ける人は、

柔軟で素直な面を持っていると実感します。

 

自分なりの価値観・軸はぶらさずに、

現実に対して、素直で柔軟な対応をし続けられるかどうか

が分かれ目になっていると思います。

 

成長し続ける幹部・リーダーは

研修などで提供した新たな考えや視点について、

一旦素直に受け入れて実践し、自分にとって良いものは

取り入れるという選択をしていきます。

 

『しっかりした自分の軸を持った上で、素直で吸収力が高く

自分にとって良いと思う物事の見方・感じ方を再選択できる人』

私が考える、次世代幹部・リーダーの条件です。

不言実行より有言不実行

社会に出て仕事を初め、色々な体験を通して

自分の仕事観がつくられていくものです。

 

「お前、不言実行で行こうと思ってる?

リクルートじゃ、それカッコよくないぜ。

有言実行がもちろんベストだけど、次は有言不実行、

不言実行では周囲に影響力がないんだ」

 

内定後のアルバイトの時か入社早々の時期だったか

またどの先輩から言われたのかも忘れてしまったのですが、

痛いところを突かれたとドキッとしたことを覚えています。

 

有言不実行が、言いっぱなしで実行しないという意味でなく

公言したが実行し切れなかった、結果が出なかったでも構わない

もがくことが大切なんだという意味で先輩が言ったことは

すぐに理解できました。

 

当時の私は、

公言して結果が出せなかったらカッコ悪いと内心思っていたし、

そこまで自分をアピールするのはどうかという考えがありました。

 

その日から不言実行はカッコよくないことになりました。

 

周りを見渡すと、目標や自分のやりたいことを公言して

生き生きと働いている先輩が何人もいました。

 

・手が届きそうもないような高い目標

・誰もが避けたくなるような難しい顧客やテーマ

・効果がはっきり見えない新商品・サービス

などに「やる!」と公言して率先して動いていく姿

 

カッコ良かったし、そういう先輩は年次に関係なく

周囲に影響力がありました。

 

リクルートでは入社すると

「自ら機会を作り出し機会によって自らを変えよ」

というプレートが配布され、皆が机の上に飾っていました。

成長したければ、自分で機会を作りだせ

日々の仕事の中にいくらでもチャンスがあるということです。

皆がこのことを実践していました。

 

成長意欲の高い人達の集団でしたが、

自分の事だけを考えてチャレンジしているのでなく

刺激し合って互いを高めていく風土がありました。

 

私を見ていて、アドバイスをくれた先輩に感謝です。

その一言のおかげで、リクルートの職場風土の中で

自身を成長させていくことが出来たと思います。

 

「やる!」と言って逃げ場を無くし自分を追い込む

同じチャレンジでも、個に収まることなく、周囲を巻き込み

周囲に何らかの影響を与えて前進する

ということを大切にしてきました。

 

今でも

自分にちょっと元気ないな、内向きだなと感じる時

この言葉を思い出して修正をかけるようにしています。

 

 

 

 

 

新しい手帳に書く言葉

あけましておめでとうございます。

 

ほぼ日手帳を使い始めて3年目

日記をつける習慣がなかった私ですが、

この手帳のおかげで日記が続いています。

書いてある内容は他愛もないことばかりですが、

1日1日を大切にしていこうと始めたことなので、

ずっと続けていこうと思っています。

 

毎年、新しい手帳に最初に書く言葉が2つあります。

 

ひとつは『一隅を照らす』です。

天台宗の開祖、最澄の言葉で、

自分の置かれている場所や立場でベストを尽くす

自分が光れば、周囲も光る。社会も豊かになる

その立場立場において、なくてはならない人になる

自分の持てる能力を発揮して一隅を照らす人になる

という意味です。

 

自分自身もそうありたいし、

自分の仕事の中心テーマだと思っています。

 

もうひとつは

『偽らない 飾らない こだわらない 力まない ひがまない』

という言葉です。

 

入社3年目25歳の時に、入社案内に載ることになりました。

当時入社案内にはあまりなかった、ルポタージュ風の記事で、

コピーライターが数日間張り付いて取材を受けました。

その方が、私の親父にも取材をして言葉にしてくれたのです。

 

親父は、

「自分の力で何かできている訳じゃない。偉そうにするな」

「何事も腹八分目で行け、欲張るといけない」

とは良く言っていましたが、

このようにしっかりと伝えてはくれていませんでした。

コピーライターの方のおかげです。

 

この言葉は私の人生においてとても大切な言葉になりました。

特に、40歳の時、親父が67歳で亡くなって以降です。

 

欲深いというか、ガツガツしているところがあって

良い方向へ向かえば良いのですが・・・

自分を律する、方向づける言葉です。

 

親父が自分自身に言い聞かせていたことなのでしょう。

自分に似ている息子に伝えてくれたんだと思います。

 

この言葉の背景に親父の色んな人生体験があったはずで、

生きているうちに、酒でも飲みながら聞きたかったなぁ

と今更ながら思います。

 

親父が残してくれたこの言葉で、

内省したり、自分を励ましたりして、

何とかこれまで大きな間違いなくやって来れました。

 

今年もこのふたつの言葉を時折見返しながら、

1日1日を大切にしていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

柳家小三治師匠を偲んで

今年最後は10月に亡くなった小三治師匠について書きます。

 

名人と言われ、人間国宝になっても、ストイックに芸を追求し

亡くなる5日前まで高座に上がり続けた人。

一番好きで尊敬する落語家がこの世を去ってしまいました。

 

高座に座っただけで、観客が落語の世界に入れてしまう。

「目の前の小三治が消えて登場人物が現れる」とまで称される。

そこに至るには計り知れない努力や研鑽があったと思います。

 

実は大学時代、小三治師匠に学園祭に出演して頂いた際、

数時間お世話をさせてもらった経験がありました。

こちらを気遣ってくれるとても優しい人だなと

感じたことを覚えています。

 

それから40年間ずっとファンでした。

著書や雑誌で語った師匠の言葉は

私の仕事、人生における教訓であり、

強く心に刺さるものばかりです。

 

「うまくやろうとしないこと。それが難しい。とても難しい

じゃあ、下手なまんまでいいのかっていうと

そうじゃないんだよねぇ(笑)

心を理解しなきゃ、人の心を理解しなきゃ

人が生きるっていうのはどういうことか

それをどうやって理解していくかっていうと

音楽を聞き、絵を見、小説を読み、人の話を聞き

芝居を見、もちろん映画も見て

つまり、自分以外のものから発見していく

なにを発見していくかっていうと、自分を発見していくんですね

そういう鏡に照らし合わせて、ええっ、俺ってこんななの?って」

 

 

「これでいいわけはないって

自分に思えるかどうかってことだよ

安心しているときが、一番危ないときだよ

迷ってねぇときは、危ない

迷っているときは、もっと危ない

要するにいつも危ない」

 

 

「結局、最後は人間性ですよ

どうすればいい人間になれるかなんて、そんなこたぁ、分かんねぇ

そんなことを考えているうちは、まだまだ青臭いね

本当の肚で、肚の底から自分の考え方、生き方

胸でっていうよりは、肚でぶつかっていくっていう」

 

 

3年前、出張の際に上野鈴本で師匠の噺を聞くことができました。

頚椎の手術の後で、上下が切りづらい感じでしたが、

生で初めて聞いた『死神』は素晴らしく、感動しました。

それが私が最後に小三治師匠を観た高座となりました。

 

 

「この先10年、20年、自分がどう変わっていくのか

楽しみです。変えていくのではなく、変わっていく

80(歳)でも駆け出しみたいなものですよ

100になっても120になっても、やりたいと思っています」

と語っていたそうです。

 

私も生涯現役を目指していますが、

師匠のように真摯に仕事に向き合い続けられるかどうか。

1ミリでも近づくべく頑張りたいと思います。

 

大晦日は小三治師匠の『芝浜』を聞きながら

この1年を振り返ります。

 

 

 

 

相手の立場に立つ

自分が顧客の立場、商品やサービスを買う立場になってみると

「なかなか顧客の立場には立ってくれないものだなぁ〜」

と感じることが時々あります。

 

自宅のリフォーム時のエピソードです。

2階のリビングに大型の冷蔵庫を置きたいことを営業担当に伝え

設置場所などについて相談しながら決めたのですが、

搬入のことをすっかり忘れていました。

気になってこちらから確認すると

「あっ、そうですね。階段から2階へは搬入できませんね」

「えっ、それは困るよ」

「すみません。以前もこのようなケースがありまして」

「じゃあその方はどうしたの?」

「冷蔵庫のサイズを小さくされました」

「はぁ?・・・・・(早く言ってよ)」

こちらが言ったことに対応しているだけで、

その先のことまで考えてくれなかったのです。

 

会社の中でも、相手の立場に立つことはできていないものです。

上司部下のコミュニケーションにおいては

「分かっているよ。お前の立場も分かる」と

部下の状況をしっかり聞かずに言ってしまったり、

「こんなこと悩んでいるんじゃないのか」と

勝手に解釈してアドバイスをしたり、

部下は内心「全然立場に立ってくれない・・・」と思っています。

部下に関心を持つ姿勢はとても良いのですが、

相手の立場に立っていません。

 

立場に立つつもりでも、端から客観的に察したり、

こちらの勝手な価値判断で決めつけてしまうものなのです。

 

と言う私も以前はそうでした。

 

『相手の立場に立つ』ことは今の仕事の基本動作です。

それは

・相手の置かれた現実状況をできる限り掴んで

・自分だったらどう感じ考えるかをイマジネーションして

・感じたことを率直に表現する

というものです。

 

この基本を教わった時、

自分が相手のことを”分かったつもり”で済ませてきたことに気づきました。

営業課長時代の部下に申し訳なかったなと反省しました。

部下とのコミュニケーションは多かった方ですし、

人に対するセンスはあった方なので、

部下のことは良く分かっていると思い込んでいたのです。

おそらく、部下たちは場面場面で「分かっちゃいないな〜

立場に立ってくれないな〜」と思っていたはずです。

 

しかし、部下との時間は取り戻せません。

それから家族とのコミュニケーションを改めました。

 

家族はそれぞれどのような現実状況に置かれているんだろう

今日は何があったのだろう。何か変化があったのだろうか

その現実状況で何を感じ考えているのだろう

というようなことを考えるようになりました。

 

今でも覚えているシーンがあります。

 

ある日家内から

「今週の土曜日天気は良いのかしら?」と聞かれました。

以前の自分だったら

「良いんじゃない。天気予報は・・・」と答えるところでした。

しかしそこで“何かのメッセージだろうな、何がしたいのかな”と

相手の立場で考えて

「今度の土曜日何があったっけ?どこか行きたいところがあるの?」

と聞き直しました。

すると「忙しそうだから言い出せなかったんだけど、実は・・・」と

用件を話してくれました。

彼女の方が私の立場に立ってくれていたのです。

その会話の後

「最近のあなた、ちゃんと人の話を聴いてくれるようになったね」と

家内から褒められました。

 

お恥ずかしい話です。

いかにそれまでが適当なコミュニケーションだったことか。

 

今も研修等で相手の立場に立って感じ考えることの大切さを

私の失敗談を含めて受講者の方々に伝えています。

 

『相手の立場に立つ』という誰もが知っている言葉ですが、

コミュニケーションの核心であり、深い言葉です。

このブログでもこれからも時折触れて行きたいと思います。

 

CE(コミュニケーションエンジニア)としてのスタート

リクルートコミュニケーションエンジニアリングの創業期に

立ち上げメンバーと共に師匠から学んだ大原則は

そもそも人は自発性、主体性を持っている

人は自分で現実を見て感じ考え行動したいと思っている

という人間観でした。

 

この考えは自分の中にもうっすらとはあったと思いますが、

その手前で問題指摘のプロジェクトで失敗していた私には

ストレートに深く自分の心の中に入っていきました。

 

その人間観を持って、ありのままの人と組織に向き合い

事業が前に進む原動力がどこにあるのかを見出し

社員自身がその力を再発見して一歩を踏み出すための

触媒機能を果たすのが我々の役割。

そのためにマイナス面だけでなくプラスの面に着眼する。

 

人を変えるのではない、そもそも人は変わらない

コミュニケーションを変える、活性化するのが仕事

コミュニケーションの活性化からモチベーションを立ち上げる

そのための技術を学びました。

 

何かを教える講師・トレーナーではなく、

我々はコミュニケーションエンジニア(CE)だと、

自分たちの呼称も考えて、立ち位置を明確にしました。

 

最初の仕事は、ある書店チェーンの幹部研修でした。

事前に幹部一人ひとりにインタビューを行い社長に報告したのですが、

「専務のくせに何も決めない」「あの店長はリーダー失格だ」・・・・と。

ダメ出しの連呼

「社長はそうはおっしゃいますが、私から見ると専務は○○な強みがある

○○のような持ち味もある。また○○店長は・・・・・・・・」。

自分がプラスに着眼して捉えた幹部一人ひとりの特徴を一気に話すと

「まあ、そう言われればそういう面もあるか・・・・。

そういう面を引き出せていない俺の側に問題があるかもしれん。

そういう研修なのか今回は。うん!宜しく頼むよ」と言ってくれました。

 

かつてないほど緊張して臨んだ場でしたが、

納得したことについては素直に切り替えられる、

駆け出しの自分に賭けてくれる社長はすごい人だと思いました。

また、社長は幹部に色々ダメ出しをするけれど、

それは期待や思いが強いが故なんだと気付くことができました。

 

初めての研修は思った以上の成功でした。

「最近会議で幹部が自分の意見をしっかり発言するんだよ。

この前は“社長それは違います”なんて俺がダメ出しされちゃったよ」

と嬉しそうに話してくれた社長の顔を今も覚えています。

 

あれから30年近く変わらぬスタンスでやってきました。

標準化して大量生産するようなサービスではないので、

出身母体のリクルートコミュニケーションエンジニアリングも

大きな会社にはなりませんでしたが、

後輩たちはプライドを持ってこの仕事に取組んでいます。

 

私もこれからも愚直に取組んでいきます。

問題指摘ばかりのレポート〜若き日の失敗

今回は私の失敗体験の話です。

 

29歳の頃、私は新卒採用事業部の営業課長でした。

営業担当時代からの担当顧客であった大手メーカーA社に

組織風土改革活動を提案し取り組みました。

 

それまでA社と新しい技術を生み出すような積極的な学生を採用するべく

色々な提案をして取組んできましたが、なかなか成果が上がりません。

A社の安定志向の社風、おとなしい組織風土が原因でした。

 

どうしたものか悩んでいたその頃、隣にいた教育事業部が

A社の組織診断調査を既に何年にも渡って実施していた事を知りました。

自分がそれまで感じていたことがデータとしてまとまっていました。

「これは使える!」と思った私は、そのデータを使って

A社の組織風土の問題点をレポートにまとめました。

 

・新しいことに挑戦しようとしない

・管理職が非常に保守的

・言われたことを真面目にこなす受け身体質

・会社全体がぬるま湯的風土になっている

・・・・・

 

このレポートはインパクトがありました。

「これがうちの組織の課題だ!よく捉えている」

レポートを報告するたびにそのような反応を得ました。

 

そして、教育事業部やブレーンの力を借り組織風土改革の提案を考え

最終的には社長への提案を経て、実際の活動を展開していきました。

 

しかしうまく行きませんでした。

A社に入り込んで色々な活動をしましたが、1年程経過しても

目立った変化を起こせませんでした。

原因は私やプロジェクトメンバーが強引に引っ張っているだけで、

肝心のA社の社員や管理職に火が付かなかったからです。

今から考えれば当たり前のことです。

勢いだけで突っ込んだ当時の私には分かっていませんでした。

 

そもそも外部からは問題点を直言することが求められているものです。

社内でも薄々分かっていることだが、外部から痛いところを指摘してもらい、

危機感を醸成したいというのが狙いでしょう。

当時流行っていたコンサルタントもそのアプローチだったので、

何の疑いもなく自分もやってみたのです。

 

プロジェクトをたたむ時、浅はかだった自分を反省しました。

右肩上がりの業界、急成長の会社、元気な社員の集団であれば、

問題指摘で良いのですが、そのような会社はそもそも

組織や人の課題をそれほど抱えていません。

 

一番の反省は、自分のレポートによってある事業部の部長が

異動になってしまったことです。本当の理由は分かりませんが

何らかのきっかけになったのは確かだと思っています。

この仕事は人の人生に関わるものだということを思い知りました。

 

安易な問題指摘はしない。

問題課題の発見と同時に社員の中の前に進む原動力を発見する。

その責任と覚悟を持って取り組もうと心に決めました。

 

そこからリクルートコミュニケーションエンジニアリングでの

修行が始まったのです。

 

 

 

 

『来ん・去る・たんと』にはならない

昔ある大手企業の方が

「コンサルタントって何の訳だか知ってる?」

「大事な時に来ん、危なくなると去る、しかし金をたんととるって言うんだよ」

と話してくれました。

 

この話をお客さんにすると、結構その通り!という反応が多くて驚きました。

「高い金払ってレポートが出てきて、その後の実行支援には

追加料金が必要ですと言われて頭きた」というような話もありました。

 

当時、求人広告の営業をしていた自分はピンと来なかったのですが、

戦略系のコンサルタントだけでなく、人事系など

色々なコンサルティングが流行り始めていて、

「コンサルタントばかりが増えてどうするんだろう」

というぼんやりとした違和感を持ったことを記憶しています。

 

この『来ん・去る・たんと』という言葉は、

自分の仕事姿勢においてのキーワードになりました。

 

独立する際には、自分の仕事をどう伝えるか悩みました。

しかし、言葉遊びをしてもしょうがないので、

人事・経営のコンサルタントと言うことにしています。

 

1番悩み考えたのは、

自分が何に対して責任を負い対価を得るのかということ。

これは考え続けるべきことだし、自分の力量アップによって

バージョンアップしていくものかも知れません。

 

自分のこだわりとして、

定形の研修を相手が誰であれ提供していくような仕事はしたくない。

教育のための教育もあまりやりたくない。

事業が前に進む一歩を社員が自ら進み出す支援をしたいと思っています。

 

『事業が前に進む一歩を社員が自ら進み出す支援』を

リクルート時代からやってきて、

研修がきっかけで新規事業が一気に進んだり、

売上利益が改善するような例がいくつもありました。

独立の際に、報酬を成果報酬型にしてはどうかと考えました。

実際にトライしてみましたが、途中で軌道修正することになりました。

自分が成果の方に目が行ってしまい、“社員が自発的に動く力”が付かない方向に

引っ張っていることに気づいたからです。(途中で気づけて良かった!)

 

猛反省し、自分が何に責任を負うのかを定義しました。

なかなか明確な言葉にはなりませんが、

『関わった人が自分の意志で一歩を踏み出すことに責任を持つ』としました。

仮に研修期間・契約期間が過ぎたとしても、

関わった方から声が掛かれば支援したいと思っています。

(単なる甘えや依存は断りますが)

 

主役は私ではなく、経営者を含めた社員一人ひとり、

順風満帆に事が進むような事業環境ではありません。

様々な困難を彼らが乗り越える支援ができる存在でありたい。

 

「来ん・去る・たんと」にはならない道を歩んで行きます。

育ジイとして学んでいること

経営者から

「うちの会社は受け身体質で困る」

「社員が自発的、主体的に動かない」

という悩みを聞くことから私の仕事が始まります。

 

30年近く前、この仕事を始めた当時

師匠から言われてきたことは、

そもそも人は自発性、主体性を持っている

人間は自分で現実を見て感じ考え行動するもの

それを信じて前提として取り組めということでした。

 

「赤ん坊を見ていれば分かるよ。

親が『このおもちゃの方が面白いぞ』と言ったって

自分で選んだおもちゃでしか遊ばないもんだ」とも言わました。

しかし、当時既に私の子供は

小学生と幼稚園の年長になっていたので

既に立派に親に忖度するようになっていて

残念ながら、実体験として体に入れることはできませんでした。

 

この人間観を信頼前提としてこれまでやってきて

自分の信念と言えるものになっていますが

孫が生まれてからの2年間、人の自発性、主体性の原型を

体感する日々を送ることができています。

 

いや〜本当にすごい好奇心と集中力!!

 

こちらから何か渡しても気に入らなきゃ投げ捨てる

自分で選び気に入ったらずっと飽きるまで遊び続ける

こちらに時間もあるし付き合うんですが、結構ヘトヘトです。

おかげで“じいじ”の忍耐力は強化されました。

人の純粋な主体性ってすごいなと感動する日々

仕事における人間観の軸がよりブレなくなっています。

 

しかし、2歳を過ぎて最近少し感じるのが“忖度の兆し”

それはそれで可愛いし、こちらとしては気持ちが良かったりしますが、

調子に乗ってこちらの価値観に誘導し過ぎちゃいけない!

自分が喜ぶ、自己満足のための子育てをしちゃいかんぞ!!

と自分自身に注意シグナルを送っています。

 

別に良い学校に行って欲しいとか何かになって欲しい

というものがある訳じゃない。

『自分で現実を直視して、感じ考え試行錯誤し、

失敗や成功を繰り返して、そこから学べる人』

に育てるのが私の役目。

 

愛情をもって接し見守っていくだけですが、

彼と一緒に過ごすことで、こちらが親として人として

大切なことを気づかせてくれています。

 

子によって親が育てられると言いますが、

そういう意味では2度目の子(孫)育てができて

私は幸運です。

見える化が進まない

問題解決や業務改善のためには、

現状の見える化が不可欠なのだが、

なかなか進まないのが実際のようだ。

 

見える化のツールや手法は様々あるし、

コンサルティングも存在している。

殆どの企業が何らかのものを導入しているはず。

 

経営者とこのテーマで話をすると

・色々やってみたが、社員が主体的にやらない

・自分から現状を見たくない。問題があったら社長から怒られると思っている

・結局、社長から「これはどうなっている?」と指摘しないと動かない

という言葉が出てくる。

 

実際に関わってみると、

何故こんな簡単な見える化が進まないのか?と思うことが多い。

経営者達が嘆くのはもっともだ。

 

そのような状況に対して、

更に手法やスキルを充実させるアプローチもあるのだが、

それだけで上手くいくとは思わない。

 

それは、

無自覚に(もしくは自覚的に)見える化を進めたくない

というものが組織の中にあることが、根本の原因だから。

 

その風土、経営者と社員達が作ってきたものを変えていかない限り、

社員の主体的な動きは出ない。

 

簡単ではないが、その風土を変えることはできる。

風土が変わっていくことで、

自分達の仕事の結果をはっきり見たいという意欲が出てくる。

そこから社員による主体的な見える化がスタートする。

HPの開設にあたって

どこまで一人でやれるか、自分らしくやってみようと

53歳で独立し、楽しく激しく仕事してきました。

走れるだけ走って、止まったらそこで終われば良いという考えでしたが、

コロナが考える時間や生活パターンを見直す時間をくれました。

 

1日1日を大事にしようと「ほぼ日手帳」を使い始めました。

一緒に暮らす孫との毎日が楽しい!しかし体力必要とジムを再開。

家族との食事が美味しくて大事なことを実感しました。

 

長生きしたい、仕事も1日でも長く続けたい、と思うようになりました。

ここまでの資産を食い潰しながらやれば何とかなるか?

いや、それではつまらないし、そんな甘い仕事ではない。

 

仕事のクオリティを維持向上させねば!

そのためには、自分の仕事の価値や機能を言葉にすること

それを発信して、お客さんを裏切らないサービスを提供すること

更に自分を磨くべく、もがくことじゃないかと。

 

リクルートコミュニケーションエンジニアリングで

師匠から技術を学び、鍛えてもらい、ここまで生きてこれました。

自分なりに良い仕事をしてきたという自負もあります。

そして今もお客さんのテーマと向き合って精一杯もがいています。

 

文章を書くのは苦手だけど、ブログの形で発信していこうと決め、

折角なのでホームページも作成しようとジオコスの伊藤さんに相談。

伊藤さん、三谷さんのご協力でこのようなホームページが完成しました。

等身大の自分を表現してくれています。さすがプロ!!

 

ブログの内容は

これまでの仕事で得てきたこと、

今の仕事を通して感じたこと

孫の育児(育ジイ)を通して感じたこと

趣味の音楽、落語鑑賞のこと

などなど

 

ほぼ自分のための記録になるかも知れませんが、

仕事で関わった方々に時々のぞいてもらえば嬉しい限りです。

 

1番の読者は青年になった時の孫であってほしい。

「じいじも結構頑張っていたんだな」と思ってくれたら幸せです。